「名前にトリートメントって付いているし、酸熱トリートメントと通常のトリートメントはよく似たもの」なんて思っていませんか?
結論から言うと、トリートメントとは全く似ていない別物のメニューです!
酸熱トリートメントは髪の内部に作用し、ダメージや加齢によって失ったハリコシを取り戻すことが可能なメニュー。
普通のトリートメントなら太刀打ちできないハイダメージ毛・エイジング毛を、きれいな髪に導くことができるんやって。
ところがこの絶大な効果と引き換えに、施術のタイミング・回数に制限があるんです。
本記事では現役美容師の「橋口美月」が、酸熱トリートメントの施術に適切な施術タイミング・回数とは?なんで制限が必要なの?といった疑問について解説していきます。
「酸熱トリートメントの施術は1回だけじゃあかんの!?」と思っている人は、ぜひ最後まで読んでくださいね。
酸熱トリートメントのベストな回数って?
酸熱トリートメントには、施術のタイミング・回数に制限があります。
通常のトリートメントなら「施術の間隔を◯日以上空けなければいけない」といった制限はなく、やりたいときに施術を受けることが可能です。
4週間ペースで白髪染めに来店していて同時に必ずトリートメントをする人なら、1ヶ月に2回トリートメントをするなんてこともあるかもしれませんね。
しかし酸熱トリートメントの場合、いかなる理由があろうと1ヶ月に2回以上の施術はおすすめしません。
なぜなら、酸熱トリートメントには施術のタイミング・回数が決まっていて、これらを守ることではじめて正しい効果が得られるからです。
扱い方をきちんと守らなければ、髪がきれいになるどころか髪が硬くゴワゴワになってしまうことも…。
恐ろしすぎる…。私に正しいタイミングと回数を教えて。
もちろん!酸熱トリートメントで理解してほしいことを3つ解説しますね。
ダメージ具合によって頻度が変わる
基本的には1ヶ月半〜2ヶ月ペースで、3〜5回の施術を推奨しています。
ただし髪がとろろのようにトロンとしたハイダメージな人なら、3回目までは1ヶ月〜1ヶ月半、4回目以降は1ヶ月半〜2ヶ月ペースになることも。
1ヶ月間隔を空けることは全員に共通することですが、髪のダメージ具合によって施術タイミング・回数に若干の差があります。
その差は何が影響してるん?もうちょっと分かりやすく教えて!
分かりやすく100メートル走で例えてみますね。
例えば、髪のダメージを感じないツルツルな髪がゴール地点なら、
- ブリーチや縮毛矯正で髪がかなり傷んでいる人はスタート地点よりも手前(場外)
- ハイダメージとはいかないまでの髪にダメージを感じる人はスタート地点
- カラーなどで若干のダメージを負っている人は50メートル地点
といった感じ。
酸熱トリートメントが向いている人は、ゴールから100メートル以上離れている①と②の人。
ダメージを負っていると一言で言っても、ゴールまでの距離が違えばゴールするためにかかる時間も変わってきますよね。
ハイダメージでスタート地点にすら立てていない人は、そもそもスタートに立つことから始めないといけません。
だからハイダメージの人は最初だけ1ヶ月〜1ヶ月半ペースなんか!これはスタート地点に辿り着くためのスタートダッシュなんやな。
その通り!早くスタート地点に立たなきゃ100メートル走に参加すらできないですからね(笑)
髪の状態がハイダメージなのか?傷みを負っているけどハイダメージまではいかないのか?は自己判断が難しいところ。
正確なタイミング・回数についてはプロの美容師に伺うようにしてくださいね。
1ヶ月未満で2回は行わない
酸熱トリートメントは、最低でも1ヶ月は間隔をあける必要があります。
酸熱トリートメントは通常のトリートメントとは仕組みが違うため、やればやるほど効果的という単純なものではありません。
通常のトリートメントは髪をしっとり保湿させることが目的。
酸熱トリートメントは、ダメージによってアルカリ性に偏った髪を酸性に戻すことで、健康毛のような強い髪に導くことが目的なんです。
髪は通常弱酸性ですが、ダメージの影響を受けるとアルカリ性に偏ります。
髪がアルカリ性に偏るとキューティクルが開くため、髪内部の水分が逃げやすく乾燥しがちに。
結果、髪がもろくなりダメージを受け流すことができず簡単に傷むようになります。
酸熱トリートメントは強い酸性の性質を持つためアルカリ性に偏った髪を本来の弱酸性に戻し、ダメージに負けない強い髪へと導くことが可能です。
トリートメントとの違いは理解できたけど、もし万が一間隔を守らずに施術を行うと髪はどうなるの?
過収斂(かしゅうれん)という現象が起こり、髪が硬くなりゴワつくリスクが高まります。
もし決められたタイミング・回数を守らずに短期間で何度も繰り返して行うと、必要以上に髪が酸性に偏るため髪の質感を損なうリスクが高まります。
酸熱トリートメントはいわば手術のようなもの。体だって、悪いところが治るからって何度もお腹を切って手術しないですよね?それと同じ!
髪をきれいにしようとして質感が損なうなんて本末転倒ですよね。
正しく効果を得たいなら、焦らず適切なタイミング・間隔で施術を受けるようにしましょう。
髪の状態が良くなったら2ヶ月に1度
酸熱トリートメントで髪の状態が良くなったら、施術はできひんの?
条件次第では施術可能ですよ!
酸熱トリートメントは、ハイダメージを負って何をしても状態が良くならない髪を、なんとかきれいな髪に導く手術のようなメニュー。
一般的には3〜5回施術を受ければ、扱いやすさの差を実感できるくらい髪がきれいになります。
決まった回数の施術を受けて髪がきれいになったら、無理に施術を継続する必要はありません。
ただ、一度施術を受けると「酸熱トリートメントをやらなくなって、質感を損なうのが怖い!」「これからも続けていきたい」と感じる人も多いんです。
もし髪がきれいになっても施術を続けたいなら、施術の間隔・取り入れ方を工夫しましょう。
髪の状態がきれいになったのにダメージ毛と同じ間隔で施術を行うと、過収斂を引き起こすリスクが高まります。
過収斂のリスクを回避するためには、施術の間隔を空けるか、間に髪をやわらかくサラサラにしてくれる酵素トリートメントを挟むことがおすすめです。
施術の回数・頻度が決まっている理由
施術の回数や頻度が決まってるメニューってほとんどないやんな?酸熱トリートメントはなんで決まってるん?
酸熱トリートメントが、何度か繰り返すことで効果が得られる・短期間で繰り返すと酸性に偏りすぎるという2つの特徴を持っているから!
それぞれ詳しく解説していきます。
繰り返すことで効果が発揮されるから
酸熱トリートメントは、1回施術を受ければ劇的に髪がきれいになる即効性があるメニューではありません。
1ヶ月半〜2ヶ月ペースで3〜5回ほど繰り返し施術を行うことで、酸熱トリートメントの持つ効果が初めて発揮されます。
もし途中でやめてしまうとダメージ補修が不十分になるため、すぐに元のダメージ状態に戻る可能性も。
分かりやすく傷んだ家で例えてみました。
台風で屋根が吹き飛ばされ、家の中の柱が数本折れている倒壊寸前の家。
人が住める状態に戻すには、
- 屋根を直す
- 柱を直す
- 壁を張り替える
- 床を張り替える
- 割れた窓を取り替える
- 家具を片付ける
といった手順が必要になりますよね。
途中で修繕工事をやめてしまうと、家はもろいままなので次の台風でまたボロボロになるリスクがあります。
ダメージを負っている人ほど修繕工事の手間が増えるので回数が多くなります。途中で諦めずに最後まで継続するようにしてくださいね!
なるほど!じゃあ私は3ヶ月おきにカラーに行ってるし、3ヶ月ペースで5〜7回施術してもらうわ。
間隔を空けすぎるのもNG!これもまたすぐに髪が戻っちゃう原因になります。
施術回数を守っても施術間隔が空きすぎると正しく効果が得られない原因になります。
酸熱トリートメントの効果は永遠ではありません。
効果が持続している間に施術を重ねるとより状態が良くなりますが、効果が切れて髪が元のダメージ状態に戻ってしまうとまた一から補修しなければいけません。
髪が傷んでいるうちは1ヶ月半〜2ヶ月ペースで行うようにしましょう。
このあたりは個人差があるので、担当美容師の指示に従ってくださいね。
短期間でやりすぎると質感が悪くなる
酸熱トリートメントは酸性の性質。短期間で繰り返し髪に塗布するとかえって髪質を損なう恐れがあります。
髪は通常pH4.5〜5.5の弱酸性状態ですが、アルカリ性のカラー剤・パーマ剤による影響を受けるとどんどんアルカリ性に偏ります。
アルカリ性に偏ると髪のバリアを担うキューティクルが機能しづらくなるため、普段よりダメージを負いやすくもろい状態に…。
そこで有効的なのが、酸性の性質を持つ酸熱トリートメントです。
アルカリ性の薬剤によって開いたキューティクルを、酸性の酸熱トリートメントによってキューティクルを閉じプラマイゼロになるといったイメージ。
ところが1ヶ月未満で2回は行わないでも解説したように、短期間で何度も何度も繰り返し行うと弱酸性を飛び越えて髪が酸性に偏ってしまいます。
酸性に偏った髪はキューティクルが強く閉じすぎるため、
- 髪がギシギシする
- 髪が硬く感じる
- 髪がごわつく
といった手触り・質感を損なってしまうため、とてもきれいな状態とは言えません。
酸熱トリートメントの施術を受けてかえって質感を損なうといった残念なことにならないよう、あらかじめ適正回数が決まっているんです。
最初から適正回数を守ることが望ましいですが、万が一やりすぎて質感を損った場合は酵素トリートメントがおすすめです。
酸熱トリートメントのおすすめモデルケース
私の髪はどれくらいの回数・間隔になるんやろ?
実際に髪を見ないとはっきりとした回答はできないけど、モデルケースをいくつか考えてみました。
自分はどれに近いか?と考えながら参考にしてみてください。
ケース1 超ハイダメージ毛
髪の状態・要望が、
- ブリーチを繰り返して髪が猫っ毛のようにやわらかい
- 髪を濡らして毛先のあたりを持つと毛先が下を向く
- なるべく早く髪の状態を良くしたい
このようなケースは、1〜3回目は1〜1ヶ月半ペースで、4〜5回目は1ヶ月半〜2ヶ月ペースでの来店がおすすめです。合計5回の施術が必要になります。
ケース2 エイジング毛
髪の状態・要望が、
- 加齢により髪が頼りなくなってきた
- 普通のトリートメントではあまり効果を感じない
- ハリコシを取り戻したい
このようなケースは、1ヶ月半〜2ヶ月ペースで、3〜5回の施術がおすすめです。
ケース3 酸熱トリートメントを長く続けたい
髪の状態・要望が、
- 酸熱トリートメントを続けて髪質が整った
- ハリコシのある状態を失いたくない
このようなケースは、2ヶ月に1回もしくは酵素(こうそ)トリートメントと交互に施術を受けるのがおすすめです。
酸熱トリートメントの効果を正しく得るには
酸熱トリートメントは絶大な効果を得られる一方で、難易度が高い・失敗のリスクがあるといったリスクがあります。
酸熱トリートメントの効果を正しく得るために、知っておきたいポイントを2つまとめてみました。
美容師選びを慎重に
酸熱トリートメントは正しい知識と経験を身につけていないと取り扱いが難しく、なんとなくで施術して成功する…という単純なメニューではありません。
私の友達も酸熱トリートメントをして髪が傷んだって言ってた。
ところが知識が未熟なのにも関わらず「酸熱トリートメントができます」と謳う美容師も多いため、利用者側がしっかりと知識・経験のある美容師を選ぶ必要があります。
酸熱トリートメントを正しく理解し施術できる美容師の特徴は以下の3つ。
- 酸熱トリートメントが得意だと公言している
- SNS上に酸熱トリートメントのビフォー・アフターが掲載されている
- 口コミにてお客様の感想が確認できる
「酸熱トリートメントに興味があるけど失敗されるのが怖い…」と感じる人は、必ずこの3つの条件が揃っている人を選ぶようにしましょう。
ホームケアも怠らない
酸熱トリートメントの効果を長持ちさせるためにホームケアを怠らないよう気をつけましょう。特に意識したいことは4つ。
- 施術当日はシャンプーをしない
- 洗浄力の高いシャンプーを使わない
- 紫外線による刺激を避ける
- 髪をしっかり乾かすようにする
酸熱トリートメントが成功してきれいな髪になっても、その後のケアが不十分だとすぐに元に戻ってしまいます。
せっかく髪がきれいになったのに、「施術当日にシャンプーをしてしまった」「シャンプー剤を適当に選んだ」といった理由で髪が元のボロボロな状態に戻ったらショックですよね。
きれいな髪をキープするには、自分自身で行うホームケアが最も重要なんです!
プロである美容師が髪をケアできるのは、多くても1年のうちに20日ほど。
たった20日特別なケアを行なったからって残りの345日を適当にしても問題ないとは言えません。
サロンケアよりもホームケアの質を重視して!中でも一番意識してほしいことは毎日使うシャンプー剤。
ドラッグストアで手に入る安価なシャンプーは洗浄力がかなり高めに設定されているため、髪や頭皮表面を必要以上に乾燥させてしまいます。
髪が乾燥すると毛先がパサつき絡まりやすくなるため、新たなダメージを生んだり刺激に弱くなる原因に。
自分の髪質・皮脂量に合ったちょうどいいシャンプーを選ぶことが、きれいな髪への近道です。
私のおすすめは、酸熱トリートメントを受けた人専用の「Sammy プロトン シャンプー」です。
まとめ
酸熱トリートメントは即効性がある通常のトリートメントとは違い、何度か施術を繰り返すことで初めて絶大な効果を表します。
髪質によって差があるものの最適な施術タイミング・回数は、1ヶ月半〜2ヶ月のペースで3〜5回行うことです。
超ハイダメージで悩んでいる人は、最初の3回まで1ヶ月ペースで行うこともありますよ!
制限があるためわずらわしく感じることもあるけど、信じて続ければきっと今よりも扱いやすい髪に近づくこと間違いなし。
髪がダメージを負ったせいでハリコシがなくなった・年齢を重ねて髪が頼りなくなってきたという悩みを抱えている人は、ぜひ酸熱トリートメントの施術を検討してみてくださいね。
私も早速相談しに行ってくる!